< TITLE>たのしい幼稚園 -お仕事!-

たのしい幼稚園

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  お仕事!  

 ゼルは、サイファーの背中で興奮していた。
 否、興奮してちょろちょろするので背負われた、というのが正しい。
「もんすた、もんすた、たおすー!」
「おう、もうちっと待ちな」
 サイファーはモンスターの残りHPがごく僅かになったのを確認して、ゼルを背中から下ろす。
 たたた、と軽い足音がして、ぺしぱし、と音がする。小さな手足ではダメージは多寡が知れている。が、皆無ではない。
 たたた、と慌しい足音がし、焦ったようなゼルがサイファーのコートを引っ張った。
「さいふぁ、さいふぁ、消えない!」
「ほう? そりゃいけねぇな。もう一度行ってこい」
「うん!」
 蕩けそうな顔のサイファーに見守られながら、ゼルは何度かサイファーとモンスターの間を往復し、無事駆除に成功した。
 全身で喜びを表現し、白い顔を興奮で朱に染めたゼルを抱き上げ、サイファーは任務を続ける。
 今日の任務は前回同様、モンスターの生息調査だ。再びあの新種のモンスターに遭遇するかもしれないし、何かの拍子でゼルが元に戻るかもしれない。
 そう淡い期待を抱いているのだが……なぜか、見慣れたモンスターしか、出てこない。

 平原を駆け回ること数時間。
 流石に疲れたサイファーがガーデンへ帰還を決めたとき、小さな格闘家は誇らしげに拳を握ってみせた。
 ゼルは殆どのバトルに参加していた。
 
 どうやら彼は、生まれつきの格闘家らしい。
 任務に出る前、ガンブレードにヌンチャク、鞭、刀、銃、弓などといった、あらゆる武器を持たせてみたがさほど興味は示さず、サイファーの手の平を相手に、シャドウボクシングの真似事をし始めたのだ。
 もちろん、子猫が猫じゃらしにじゃれるのと大差ない。
 しかし、速度といい、命中率といい、技術といい。
「ちっちゃくても、ゼルなんだね〜」
 セルフィのセリフに、一同納得したのである。

 「ちゃらいま〜。あ、きすてぃ! すこっ!」
 サイファーに抱っこされてスコールの執務室に無事帰還したゼルは得意げだ。
「お帰りなさい、ゼル」
「……無事で何より」
「おら、スコールに報告だ」
「んと、さいふぁとぜる、ただいまきかんしました!」
「ご苦労様」
「ゼル、疲れたでしょう? おやつにしましょう」
「うん!」
 キスティスがサイファーからゼルを受け取り、そのまま部屋の隅のソファーに連れていく。
 色とりどりのお菓子が並び、ゼルの眼がキラキラ光る。
 キスティス相手にバトルの様子を喋りながら、ゼルはテーブルの端にお菓子を並べていく。
「何をしてるの? 全部食べて良いのよ?」
「これが、せふぃ、こっちがあー。こっちがさいふぁで、これがすこっ!」
 沢山あるお菓子を、どうやらみんなに分けるつもりらしい。
「はい、きすてぃ」
 小さな手で渡された、キャンディー。なんだか無性に懐かしい。
「ありがとう、ゼル!」
「きすてぃ、にっこりのほうが、きれいよ」
 真っ赤になって絶句するキスティスだった。
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