楽しい幼稚園

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  昼食。  

 「うぇっく……うぐ、えぐ……」
「何泣いてやがる、チキン」
 心底不思議そうな顔でちびゼルを見るサイファーの横で、風神と雷神はため息を吐いていた。
「無理」
「幼児にビビンバは食えないんだもんよ」
「あ? そんな辛ぇか?」
 サイファーは己のトレーの上を見る。とっくに食べてしまったそれは、そんなに辛くなかったと思ったのだが。
 だがゼルはぐいっと腕で涙を拭うと、大きなスプーンでせっせとビビンバを口に運ぶ。
 風神がコップに冷たい水をなみなみと注ぐが、5分と経たずに空になる。
「お水ばっか飲んじゃ、腹こわすもんよ」
 ハラハラしたようなセリフが横から聞こえ、サイファーの眉が跳ね上がった。
「何言ってんだ、チキンだぜ、心配いらねぇよ。なぁ、チキン?」
「い……いりゃねぇよ」
 わけもわからず、涙目のゼルがサイファーの口真似をする。それが余りにも可愛くて、思わずサイファーの頬が緩んだ。
「おいチキン、ボロボロこぼしてんじゃねぇよ」
「こぼしゃねぇよ」
「小生意気な口利いてんじゃねぇよ、ったくガキが……」
「がきが!」
 小さなゼルが、舌足らずながらもサイファーの口真似をする。愛らしいといえば愛らしいが、どうも教育上よろしくない気配が濃厚だ。だがサイファーはそんなことにはお構いなしだ。
「こらチキン、手ぇ出しやがれ」
「う?」
「ベタベタにしやがって。洗いに行くぞ」
 猫の子を掴むかのように荒っぽくゼルの襟首を掴むサイファー。見ているほうはゼルの首が絞まらないかと、ひやひやしてしまう。
 風神と雷神の複雑そうな視線に気付くことなく、サイファーは洗い場へと向かっていった。
 
<3へ続く>
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