楽しい幼稚園

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  ちびゼル参上!  

 「うわっ、懐かしい顔〜」
「あら、可愛いじゃない」
「どうしたの、コレは」
「……へぇ?」
 ガーデンの食堂で、視線を一身に浴びているのはサイファーとその隣にいる人物である。
「昨夜の任務で新種のモンスターにやられちまってな。朝になってもこのままだ」
「外見だけか?」
「いや、中身も、だ」
「中身も? 全部?」
「ああ。自分が誰で此処がどこかも、わかっちゃいねぇ。朝から泣くわ喚くわ……」
 顰め面で話すサイファーとスコールの間に立ち、きょときょとと不安そうに周りを見るその顔は、ここにいる彼らにとって酷く懐かしいものだ。
「おら、チキン、いつまでもくっついてんじゃねぇ」
 サイファーは乱暴に自身の足にくっついている少年を引き剥がした。
「ひゃあ!」
「いいか、チキン! 勝手なことするんじゃねぇぞ。迷子にでもなってみろ、容赦しねぇからな」
 幼児相手にどう容赦しないのだろう、と誰もが思ったが誰も口にしなかった。
 びしっと鼻先に指を突きつけられて、チキン……いや、ゼルはびくっと震えながらもこくこく、と頷いた。
「よし、わかったんなら、メシにするぞ」
「めし?」
「チキンにゃ餌で十分だ。餌をくれてやる」
「えさ!」
 違う違う、と慌ててアーヴァインの訂正が入る。
「ちがうよ〜、お食事、ごはんだよ!」
「ごはん!」
 そうそう、と一同の首が縦に動く。
「チキン、何ちんたらしてやがる。とっとときやがれ!」
 飛び上がったゼルがぱたぱたとサイファーの白い背中を目指して駆けて行く。
 その姿を見送りながら、推定四歳児をサイファーに預けていて大丈夫だろうか、と一同疑問を抱いたのは言うまでもない。

<2へ続く>
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